- 基礎編
- 株価を動かす様々な理由について知ろう
2014年8月21日
需給を決める要素(9)もうひとつの巨大プレイヤー、日銀
- ページのまとめ
-
- 日銀は、量的緩和策の一環として、ETFやREITを購入している
- 日銀のETF購入は株価対策の意味も大きい
- 将来の売却時の、株価押し下げ効果が心配
日銀も株やETFを買っている
GPIFほど巨大ではありませんが、日銀による投資も、注意しておいた方がいいでしょう。日銀は、金融政策を通じてマネーの管理をするだけではなく、自分自身が投資のプレイヤーとして、株式市場に参加しています。
日銀は伝統的に、株などのリスク資産を購入してきませんでした。これは、日銀は市場に対して中立であるべきだという考えや、もし購入した資産がマイナスになり含み損を抱えたら日銀の経営に悪影響が出るというように、さまざまな理由があるでしょう。日銀は公的機関ですので、もし株で損失を出したら、GPIFと同様に、最終的には国民の負担で穴埋めしなければならないのです。
しかし、金融緩和(量的緩和)の一環として、2010年からETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産信託)を、市場から買い入れています。その買い入れ枠は、当初1兆4000億円でした。さらに、2013年4月の金融政策決定会合において、その増額が決定されています。現在では3.5兆円になっています。
市場対策としてのETF購入
量的緩和だけが目的であれば、ETF(=株)やREITではなくて、国債を購入するだけでも足ります。あえて、ETFやREITを購入するということは、リーマン・ショック後の株式市場の低迷を支えるため、という意味もありました。
日銀がETFを大量に購入すれば、それにより、ETFの価格が上昇し、ひいては株の価格も上昇します。その意味で、日銀が株式相場を操作している、ということも言えなくもありません。また、「日銀が買うのだから、他の一般国民の皆さんも株をかっても大丈夫ですよ」と伝える、いわゆるアナウンス効果を狙った面もあるでしょう。
いずれにしても、株価(の下支え)対策という意味があるであろうことは、否めません。当然のことながら、日銀が(GPIFも)いつ、どんな株を買うのかということを、事前に洩れることはありません。しかし、市場では、日銀の購入タイミングについて、さまざまな噂があり、それを利用して儲けを狙うという方法も言われています。
これらのETFやREITは、当面は得る予定はない、とされていますが、もし売られることとになれば、大きな供給要因となりますので、株価を押し下げることになるでしょう。
金融システム安定化のための、金融機関からの株の買い入れ
さらに、日銀では2002年11月から2004年9月までの間と、2009年2月から2010年4月までの間、金融機関が保有する株式の買入れを行っています。ETFやREITの買い入れが金融緩和のために行われているのにたいして、株の買い入れは金融システム安定化、つまり、銀行の経営を安定させるために行っていたものです。
その買入れ金額は、1回目が約2兆円、2回目が約3900億円という、巨大な金額です。つまり、巨大な需要が生じたといことになりますが、これは株式市場から調達したのではなく、金融機関から直接購入したものなので、購入時の株式市場への影響はほとんどありませんでした。
日銀は、いつETFを買うのか
日銀は、いつ、どれだけETFやREITを買ったのか、後から発表します。しかし事前発表はしません。日銀がどんなタイミングでETFを買うのか事前にわかれば、それに合わせてかうことで有利な取引ができるからです。
以前は、「午前のTOPIXが前日終値と比べて1%以上下がると、その日の午後にETFの買入を実施する」と言われていましたが、現在はそのやり方はしていないと言われています。
そのため、我々個人投資家が日々の取引のなかで、日銀の売買を参考にしたり、活用したりといったことは、できそうにありません。具体的には、「これから日銀がETFを買うということをはじめる」とか、「それをこれから売っていく」とうような報道がなされた瞬間に、市場全体への影響がある、ということです。
早ければ2016年から大量売却がはじまる
ETFとは異なり、これらの株は、株式市場で売却されることが明らかにされています。つまり巨大な供給の発生であり、株式市場にマイナスの影響を与えることは間違いありません。そのスケジュールですが、日銀では、2016年3月末までは原則として売却を行わず、それ以降、2021年(平成33年)9月末までに処分する予定としています。
こういった巨大プレイヤーの動きは、市場全体の需給に大きな影響を与えるものですので、注目しなければなりません。
なお、日銀が行っている売買内容、保有資産については、日銀のホームページで公開されています。
関連リンク:https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/other_gai/index.htm/
行動が大きく変化するときの報道を見逃さない
GPIFや日銀などの、公的な巨大プレイヤーについては、たとえば株式の組み入れ比率を上げる、ETFの売却を始める、など、その行動に大きな変化が予定されたときは、必ず新聞で報道されます。市場に与える影響が大きいだけに、そのような報道を見逃さないように注意しましょう。