- 基礎編
- 株価を動かす様々な理由について知ろう
2014年8月21日
需給の基本(4)需給を大きく動かすのは、現実より期待
- ページのまとめ
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- 現在の株価には将来の期待(予想)が織り込まれている
- 期待が現実になると、これを材料出尽くしで株価が下げることがある
- 新しい期待を作るような、意外性のある材料をサプライズという
株価には将来の期待が織り込まれている
需給の基本の最後に、知っておくべきことは、株式市場は基本的に「予想」をベースに動いている、といことです。いまついている株価は、「将来この株は上がるだろう」という期待と「下がるだろう」という期待も含め、市場参加者の将来への期待をすべて織り込んで(計算に入れて)ついたものです。
したがって、株価が大きく変化するときは、その期待が大きく変化する材料が出た時です。
たとえば、「投資家インタビュー」で、野村さんはクルーズという会社の株を買って大成功しました。このときの材料は、大ヒット間違いなしといわれるゲームのリリースです。このゲームが開発されて、近々発売されるということ自体は、会社の発表でわかっていました。
しかしそれがいつ具体的に発売されるかは不明であったため、期待が株価には織り込まれていない状態で、株価はなかなか上がりません。「いつかわからないけどいつか出る」ということは、逆に言えば「いつ出るかわからない」というのが現実であり、株価はその現実のみで動いている状態です。
ところが、海外サイトにリーク情報が書き込まれて、それによっていち早くリリースに気付いた野村さんは、株を仕入れます。そして、そのリリースの情報が広がると、まだ出たばかりのゲームであるにも関わらず、「大ヒット間違いなし」という期待から、株価は急上昇します。こうして、野村さんは大きな利益を手にすることができました。
まさに、「市場の期待の変化」を先どりする形で、利益を得た典型例です。
期待通りに業績がアップしたのに、株価が下がる?
上の例とは逆に、実際に良い内容の決算が発表されてみると、思ったほど株価が上がらない、あるいは、翌日の1日だけは上がったけど、すぐに下落が続いてしまう、といったことがよくあります。
なぜこのようなことが起きるのかというと、その業績の上方修正はすでに株価に織り込まれていたからです。業績に大きな影響を与えるような新製品の大ヒットがあれば、通常、それはだれでもすでに知っていることですし、証券会社のアナリストなどや、雑誌に記事を書く評論家なども業績を上方修正するだろうことを予想して発言しています。
そのために、その材料を織り込んで(期待を込めて)株が買い進められているのです。材料(決算の上方修正)が正式に発表される前に、市場はすでにそれを予想し、株価は上がってしまっていた、ということです。
このような「織り込み済み」状態のときに、実際にその材料が現実化する(会社からの決算の上方修正が発表される)と、その材料はそこで寿命が尽きた、と考えられるのです。発表される前までは、「期待」がありました。しかし、実際に発表されてしまったわけですから、もうそのことに対する「期待」はなくなってしまったのです。
このように、材料とは常に未来への「期待」なのですが、その期待は現実になると、消えてしまいます。これはすなわち、材料が消えてしまったということです。そこでこのことを「材料出尽くし」といいます。
たとえば、アサヒグループホールディングスは、2014年7月22日に、2014年中間期(1~6月)の連結売上高を従来の7950億円の予想から8112億円へと、162億円引き上げ、上半期の過去最高となる好調な予想を発表しました。
株価の動きを見ると、決算発表前の22日終値は3149円でした。そして、その翌日の寄り付きでは、3219円と好決算を反映したような高値をつけたもの、そこから急落し、結局その日は3143円と、決算発表前より低い株価で終わってしまいました。
好決算という「材料」は、あっという間に出尽くして消えてしまい、株価が下げてしまったというわけです。
大切なのは、意外な発表である「サプライズ」
一方、まったく期待がなかったのに、業績の上方修正があった場合だとか、期待はあったけれどその期待を上回るような大きな業績修正があった場合、株価にはそれはまだ織り込まれていないので、急速にそれを織り込もうとして値上がりします。こういう材料を「サプライズ」といったりします。株価が、期待を織り込んでいないと考えている投資家が多かった、ということです。
たとえば、2014年8月8日(金)には、SNS大手のミクシィが四半期決算を発表しました。そこでは、スマホ向けゲームの「モンスターストライク」が絶好調のため、2014年4~9月期は80億円の利益になるという会社予想を発表した。従来予想は28億円の黒字だったので、黒字が約2.5倍にも増えたということになり、大きなサプライズでした。
これを受け翌11日(月)のミクシィの株価は、ストップ高比例配分となり、ごく一部の人しか買えない状態になりました。
このような「サプライズ」とは、言い方を変えれば、株の価値への期待を大きく変化させる材料です。株価はさまざまな期待が集まってつけられたものであるので、その期待を大きく変化させる材料が出た場合は、株価も大きく動くことになります。
過去の発表を研究すれば、ある程度は予想がつくこともある
その材料がサプライズとなって株価を急上昇させるのか、それとも、材料出尽くしとなるのかは、過去の企業について研究しておくと、ある程度はわかります。
また、業績予想を固く(低めに)見積もる企業なのか、それとも甘く(高めに)見積もる企業なのかも、わかるでしょう。 そのためには、過去5年分くらいにさかのぼって、その企業が、過去に業績修正を発表した際にどのように株価が動いたのかを、調べておけばいいのです。
こういったやり方については、実践編でくわしく説明します。