ページのまとめ
  • 金利は株価に大きな影響を与えるので、株式投資の際は金利の動きもチェックしておく
  • 金利を動かす要因はさまざまだが、代表は日銀が行う「金融政策」
  • 日銀が行う金融政策の内容には、「政策金利の調整」と「量的緩和」とがある

株価と金利は密接な関係を持つ

2013年に日銀(日本銀行)に黒田総裁が就任し、これまでにない「異次元緩和」を実行したことが、2013年の日本株上昇、いわゆる「アベノミクス相場」の、大きな要因でした。この例を見てもわかるように、日銀などの中央銀行がおこなう金利政策と、株価との間には、大きな関係があります。

日経平均株価の動き(2012年7月~2013年7月)

株価は、一般的には金利と逆相関の関係、つまり
・金利が上がる→株価が下がる
・金利が下がる→株価が上がる

という関係にあると言われています。

金利にも種類がある

株価と金利についてみる前に、まずは金利について確認しましょう。金利にもさまざまな種類があります。わたしたちが、住宅ローンを利用するときに支払う金利もあれば、銀行に預金してもらえる金利もありますね。それらの金利は、各銀行が決めていてばらばらですが、だいたいの傾向はあります。

これらの金利の、いわば基準となり、経済全体に強い影響を与えているのが、日本銀行が決める「政策金利」と呼ばれる金利です。

金利のおおもとを決める日本銀行とは

ところでみなさん、お金(円)は誰が発行しているか、ご存知ですか? 政府でしょうか? いえ違います。日本では、お金(1万円札などの紙幣)を印刷して、発行しているのは、「日本銀行」という銀行です。日本銀行は、国のお金(金融)を管理するという役割をもった、特別な銀行なのです。なお、米国では「FRB(連邦準備理事会)」が中央銀行にあたります。

日本銀行はお札を印刷して発行します。では、その発行したお金はどうやって世の中に出回るのでしょうか? 日本銀行が取引をするのは、みずほや三菱東京UFJといった民間銀行です。それらの銀行にお金を渡して、民間銀行を通じて、世の中にお金を出回らせるのです。

しかしもちろん、日銀が民間銀行にタダでお金をあげるわけではありません。民間銀行から、債券などを買う時もありますが、基本的には貸し出しです。貸し出しですから、当然、金利がかかります。この日銀が民間銀行にお金を貸すときの金利を「政策金利」と言うのです。

ちなみに、日本銀行は、実は株式会社であり、東証1部に上場もしています。日本銀行の株主になると、「株主優待としてお金をもらえる」ということはありませんが、でも日本銀行の株主になるなんて、ちょっと面白いですよね。

政策金利の調整で世の中に出回るお金をコントロールする

日銀が政策金利を低くすれば、民間銀行はお金を借りやすくなります。すると、今度は、民間銀行から企業や個人へ貸し出す際の金利も低くすることができ、企業や個人がお金を借りやすくなります。こうして、世の中にお金が出回りやすくなるのです。

このように、日銀が貸し出し金利を高くしたり、低くしたりすることでお金の流通量をコントロールしようというのが政策金利によるコントロールです。

日銀が主体となって金融商品を購入する量的緩和

日銀がお金の量をコントロールする方法は、政策金利の調整だけではありません。日銀が、民間銀行から直接債券やETFなどを購入することでお金を供給する方法も採られています。これを量的緩和による調整といいます。政策金利が間接的な方法(あくまで借りる主体は民間銀行なので)であるのに対して、量的緩和は、日銀が主体となって金融商品を購入するという意味で、より直接的な方法であると言えるでしょう。

金融緩和と金融引き締め

このようなメカニズムにより、市場にお金を供給して、企業や個人がお金を使いやすい状況をつくってやろう、という金融政策を「金融緩和」と言います。一方、景気がよくなって、インフレ(物価上昇)率が高くなりそうな時は、これと逆のことを行います。つまり、金利を引き上げてお金が流れにくくするのです。これを「金融引き締め」といいます。

最初に書いたように、「金融引き締め」つまり金利が上がると、株への需要は減り、金融緩和のときは株への需要が増えると言われています。

なぜなら、金利が高い時は、一般的に債券や預金などの金利も上がってますので、投資家の気持ちとして、わざわざリスクの高い株式で運用するより債券や預金で運用した方がいい、という動機が働くためです。逆に金利が低いときは、リスクがあっても高い利回りが期待できる商品で運用した方がいい、と考える人が増えるからです。

日銀は、「日銀短観」などの発表により、定期的にそのスタンス、つまり今後引き締めの方向なのか、緩和の方向なのか、といったことを発表します。これは、株式市場に非常に大きな影響を与える情報ですので、必ずチェックしておきましょう。

経済のしくみについて、少しずつ学んでいこう

わたしたちが投資をする企業は、原料を仕入れたり、モノやサービスを販売して利益を上げたり、従業員に給与を支払ったり、といった活動をしています。企業が行うこれらの活動は、「経済」というシステムの一部を占めており、経済に影響を与え、逆に経済から影響を与えられます。ここで見た金利も、経済システムの一部です。

言い換えると、経済システムの様々な面が、株価の材料となるのです。そのため、株式投資に上達するためには、経済について、最低限の知識が必要になります。これまでにそういったことを学んだことがない方にはややとっつきにいかもしれませんが、少しずつでもいいので理解をしてください。