- 基礎編
- 株価を動かす様々な理由について知ろう
2014年8月21日
需給を決める要素(4)規制緩和
- ページのまとめ
-
- 財政が苦しい中、国のお金を使わない経済政策として規制緩和が注目されている
- 規制緩和により、関連する業界にメリット・デメリットが生じる
- 規制緩和によるメリット・デメリットも株価予測する大きな材料の1つ
財政政策とは
経済システムの中で活動している要素には、企業の他に、家計(わたしたちです)や、国があります。国は、国民から税金を集め、その税金をさまざまな目的に使う、巨大な要素です。ここでは、国という要素による材料について確認します。
経済学では、経済政策の2本の柱、「財政政策」と「金融政策」を適切に組み合わせて景気の安定を図ることができるとされています。金融政策とは、「需給を決める要素(3) –金利」で述べたような、政策金利の調整などのことです。
一方、財政政策とは、簡単に言えば、国の予算を使って、公共事業などを行い、民間企業に仕事を発注して、お金をばらまこう、といことです。典型的なのが、高速道路や巨大ダム建設などです。
財政政策 | 規制緩和 | |
---|---|---|
国の予算 使用の有無 |
国の予算を使うことで景気の安定を図る | 国の予算を使わずに景気の安定を図る |
例) | 公共事業への投資 高速道路建設 巨大ダム建設 |
ネットで薬を販売することを解禁 カジノを解禁 混合診療を解禁 外国人労働者の受け入れ |
現在の考え (2014年) |
結果、巨大な財政赤字となったため、 政府も積極的には行えない |
財政支出を伴わない経済政策として 規制緩和が注目 |
巨額の財政赤字のもとでは、積極的財政政策は不可能
高度経済成長期そして、その後の低成長期からバブル期に至るまで、日本では公共事業への投資をはじめとした積極的財政政策が大々的に行われていました。しかしそのつけは、巨大な財政赤字という形で残りました。公共事業は、そもそも「お金をばらまくこと」が目的という面があったので、どうしても無駄が多くなります。
その結果、みなさんご承知の通り、日本の財政は多額の債務(借金)を抱えてしまいました。国と地方自治体をあわせた債務残高は1000兆円を超えて、一般政府の債務のGDP比では、231%で先進国の中でも断トツに高い“借金まみれ”の国なのです。
そして、単に借金が多いだけではなく、借金を返すためにさらに新しい借金をする、という多重債務状態に陥っています。
そんな状況ですから、景気が悪くても「景気対策のために公共事業でお金をばらまきましょう」とは、政府も言えません。もちろん、財政支出を伴う公共投資が、まったく行われないわけではありません。
財政支出を伴わない経済政策=規制緩和
財政支出を伴わない経済政策としては、規制緩和が重視されます。たとえば、少し前に、ネットで薬を販売することを解禁するかしないか、といったことが議論になりました。また、これまでは禁じられてたカジノを解禁しようという話もあります。自由診療と保険診療を組み合わせて利用できる混合診療を解禁しようという動きもあります。
これらはほんの一部ですが、規制緩和の典型的な例です。規制が緩和されて新しい産業や需要が創出されれば、それによって利益を受ける企業も増えます。薬が自由にネットで販売できるようになれば、「楽天」をはじめ、ネット通販を手掛けている企業が、利益を得るでしょう。もちろん、製薬メーカーも販路が広がるのですから、好影響です。
逆に、既存の薬局チェーンにとっては、悪い影響があるかもしれません。規制緩和というのは、それまで規制で守られてきた人たちにとっては、不利益を受けるものです。
また、輸出入の際にかけられる関税は、国内産業の保護という意味があり、これも一種の規制です。TPPといったしくみを推進することによって、こういった規制を緩和していこうというのも、政府の政策のひとつです
このように、規制緩和によって、恩恵を受けそうな、あるいや不利益を受けそうな業種や企業があるということも、大きな材料のひとつとなります。