ページのまとめ
  • 需給に大きな影響を与える巨大プレイヤーの動きに気をつけよう
  • GPIFとは、年金積立金管理運用独立行政法人で、国民年金などの資金を運用している
  • 安倍内閣は、GPIFに、これまでの債券中心の運用から、株式投資を積極的に行う運用への転換を迫っている

GPIFとは

巨額の資金を運用するプレイヤー(投資家)が市場に登場すると、その売買は、需給に大きな影響を与えます。そのような巨大プレイヤーの動向は、つねに気にしていなければなりません。

最近特に注目を集めているのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による、株の購入です。GPIFとは、公的年金(国民年金)資金の管理・運用業務をおこなう独立行政法人で、2006年に設立されました。

国民が積み立てた年金資金を少しでも有利に運用して、将来の年金の支払いにあてよう、という主旨です。そして、GPIFが注目を集めているのは、運用残高が130兆円もある、世界でも最大規模の投資家だからです。その動向は、金融市場に大きな影響を与えます。

公的年金はその性格上、長期間にわたって安定した運用がなされなければなりません。国民が積み立てた年金資金が、投資の失敗によって大損をするようなことが、万に一つもあってはならないのは当然ですね。

安倍内閣が目論む、株価対策としてのGPIF活用

そのため、以前は安全性の高い(収益性は低い)国債での運用が中心でした。しかし、アベノミクスの登場により、それが変化しています。

アベノミクスは政策としてインフレにすることをうたっています。インフレになれば、債券の価格は下がります。つまりアベノミクスが成功してインフレになれば、これまでのように国債中心の運用では、利益が出せない、下手をすると短期的には損失も生じる可能性があります。そのため、株式などのハイリスク・ハイリターン商品ももっと大きく運用に採りいれるべきだ、というのが安倍政権の主張です。

もっともこれは、安倍政権の人気が株高によって支えられている面が大きいことに対して、2014年に入ってからの株式相場が下落基調になっており、なんとかそれを立て直したいという首相周辺の政治的な思惑も大きいと言われています。

すでに期待が先行して株価を動かしている

理由はともかく、GPIFの運用改革(要は株を買え、ということ)は、アベノミクスの「成長戦略」のひとつとして組み入れられました。このこと自体の是非については、学者の間でも意見が別れています。株価が上昇すれば年金資金が大きく増えますが、もし株価が暴落して大きな損失が出たりしたら、最終的には国民が負担することになるからです。

GPIFでは、2014年8月に運用方針を見直す予定となっていますが、政府は前倒しでの実施を求めており、早期の見直しがなされるのではないかと言われています。

株式市場ではすでにGPIFが株を購入することは既定路線だと考えられています。日経平均株価は、2014年4月から5月中旬まで、14000円前半で推移していましたが、このGPIFの運用見直し方針が伝えられた5月後半から急上昇し、6月には15000円を超えています。

GPIF改革導入後の株価変動チャート図

これは、GPIFの買いへの期待が先行した、他のプレイヤーによる買いが中心だと思われます(すでにGPIFが株を買い始めているという推測もあります)。