ページのまとめ
  • 同じ株に対して買いたい人と売りたい人がいるから取引が成立する
  • 同じ銘柄に複数の材料がある。それをどう判断するかが、投資家の腕の見せ所
  • みんなが同じように「良い」または「悪い」と思う材料が出たときは、取引が成立しないことも

同じ株に対する正反対の見方

株式市場で取引が成立したということは、同じときに、同じ株に対して「買いたい」と思った人と、「売りたい」と思った人の両方がいた、ということです。言い換えると、同じ株なのに、正反対の表がされた、ということです。

たとえば、セブン&アイの株価が4000円であるということは、その株価で買った人は、4000円よりも高い値段で、将来に売れると思って買ったわけです。一方、その値段で売った人は、将来はセブン&アイ株は4000円より値下がりする、と思って売ったわけです。株の値段が変わらない、あるいは上がると思ったのなら、売らないはずだからです。

このように、株の値段がついている=市場で売買が成立したということは、「上がると思っている人」と「下がると思っている人」が同じように存在するということです。

すでに述べたように、投資家に提供されている材料自体は、同じなのです。同じ材料をつかって、まったく正反対の予想がもたれて、正反対の行動がとる人がいるのが、株式市場の特徴であり、また、株に取り組む面白さでもあります。

同じ株に複数の材料がある

材料には、さまざまなものがありますが、それらは個々に独立して存在しているわけではありません。景気と金利のように、相互に深く連関しているものもあります。また、市場全体には良い材料があっても、個別の銘柄には悪い材料があるなど、良い材料と、悪い材料がいくつも同時に存在している場合もあります。

同じ株に対する正反対の見方

ある投資家は、良い材料に着目して「上がる」つまり、買いだと判断します。また別の投資家は、悪い材料に着目して「下がる」つまり、売りだと判断します。

たとえば最近、「人手不足で、コンビニ業界では時給を上げているので、人件費が上がっている」というニュースがあります。これはコストの増加となりますから、業績には悪影響を与えます。すると株価には、マイナスの影響かもしれません。 一方では、高額なプレミアム商品の販売が好調、というニュースもあります。働く人の給料が上がれば、プレミアム商品の販売がさらに伸びて、売上増につながるのでは、という予想もできます。これは、株価へのプラスに働きます。

つまり投資家は、多くの材料の中から、どれが株価への影響が大きく、どれが小さいのか、良い材料と悪い材料のどちらが強いのかといったことを、知識と経験によって判断して投資をしていきます。その判断の良し悪しが、投資家の技術ということになります。

みんなが同じ考えに傾くとどうなるか

そうは言っても、だれもが同じ判断、たとえば株価が上がると思うような株もあるのではないか、と思われるかもしれません。株というより、そういう材料という方が正確ですが、確かにあります。するとどうなるのでしょうか?

なお、まれに、ある銘柄に突発的に大きなニュースが出た時に、投資家が、需要のみ(良いニュース)あるいは供給のみ(悪いニュース)に傾くことがあります。

こういうときは、売買が成立しないので、出来高ゼロになります。そしてストップ高、あるいはストップ安で、気配値(これくらいの価格なら需要または供給があるという目安)だけが示され、実際の株価はつきません。

たとえば、2014年7月にベネッセの顧客情報流出事件が起きました。その際に、ジャストシステムがベネッセの流出情報を得ていたことが判明した7月10日には、ジャストシステムの株はストップ安になりました。

ジャストシステムの株価の動き

このように、もしだれもがみんな、同じように考えるほどはっきりした良い材料、悪い材料が出たときは、その株は売買できない、ということです。

しかしこれは例外的な事態であり、通常は、同じ材料でも投資家によって判断が異なるので売買が成立しています。

売買が成立している=反対の考えが同数ある、ということを覚えておきましょう。