ページのまとめ
  • 景気とは、ひとつの実体として示すことができないので、さまざまな指標を組み合わせて判断される
  • 株価は景気よりも少し先に動きながら、景気と連動している
  • 不景気の時は主に金融が、好景気のときは主に企業の業績が、相場を動かす

景気と株価は、だいたい連動している

株式市場は、景気と密接な関係があります。一般に景気が良い時は株価(市場全体)が上がります。また景気が悪い時には株価が下がります。つまり、景気と株価はだいたいの相関(連動)関係にあると言ってよいでしょう。

景気循環と株価・金利の関係

景気は、実体としてとらえられない

ところで、言葉としてはだれでも知っている「景気」とは、なんなのでしょうか?「景気」は経済全体の動きの活発度を表す言葉です。市場経済(資本主義経済)においては、つねに同じペースで経済が動いていることはありません。

経済の動きは、好景気(好況)と不景気(不況)を繰り返す、循環(波)を描いています。景気循環には短期的なものから長期的なものまで、いろいろな期間のものがあります。

景気がよいときは、企業の業績が良くなり、そこで働く人の給料も上がり、消費も増え、そのことでますます企業の業績が良くなり、経済全体が成長します。逆に景気が悪い時は、企業の業績が悪くなり、給料が上がらないので消費が減り、そのことでますます企業の業績が悪くなり、経済全体が縮小していきます。

しかし、景気は経済全体の調子を表す言葉なので、株価のように、「これが景気です」と取り出して示すことは、できません。

しかし、いまが景気が良いのか悪いのか、良い方向に向かっているのか、悪い方向に向かっているのかがわからないと、適切な経済運営ができません。

そこで、政府(内閣府)では、物価指数や、失業率など、さまざまな経済指標組み合わせて、総合的に判断するための「景気動向指数」や「景気ウォッチャー調査」による指数を発表しています。

「景気動向指数」は、景気の動きを反映すると思われる様々な統計データを組み合わせて、計算される数字です。景気をどのくらい敏感に反映するのかによって、3種類に分けられています。

  • 先行指数:景気より少し早めに動くと言われる
  • 一致指数:景気とだいたい一致して動くと言われる
  • 遅行指数:景気よりすこし遅れて動くと言われる

先行指数は11、一致指数は11、遅行指数は6の指標を、それぞれ組み合わせて構成されています。つまり、三種類で合計27もの指標を使い、それらを総合的に見て景気を判断しているのです。

<計動向指数の内容>
  内容
先行系列 1. 最終需要財在庫率指数(逆)
2. 鉱工業生産財在庫率指数(逆)
3. 新規求人数(除学卒)
4. 実質機械受注(船舶・電力除く民需)
5. 新設住宅着工床面積
6. 消費者態度指数
7.日経商品指数(42種総合)
8. 長短金利差
9.東証株価指数
10. 投資環境指数(製造業)
11. 中小企業売上げ見通しD.I.
一致系列 1. 生産指数(鉱工業)
2. 鉱工業生産財出荷指数
3. 大口電力使用量
4.所定外労働時間指数(調査産業計)
5. 投資財出荷指数(除輸送機械)
6. 商業販売額(小売業、前年同月比)
7. 商業販売額(卸売業、前年同月比)
8. 営業利益(全産業)
9.中小企業出荷指数(製造業)
10. 有効求人倍率(除学卒)
遅行系列 1. 第3 次産業活動指数(対事業所サービス)
2.常用雇用指数(調査産業計、前年同月比) 
3. 実質法人企業設備投資(全産業)
4. 家計消費支出(全国勤労者世帯、名目、前年同月比)
5. 法人税収入
6. 完全失業率(逆)

一方、「景気ウォッチャー調査」は、日本全国の各地域で、スーパーマーケット・コンビニエンスストアや、タクシー運転手、レジャー業界など景気に敏感だといわれる対象に取材して、景気の実感をつかむという方法で行われている調査です。景気動向指数に比べて、より庶民の肌感覚でとらえた景気の実態だと言えるでしょう。

株価は景気に先行する

そして、株価(東証株価指数)は、景気動向指数の先行指標のひとつとして採用されています。先行指標の一つとして採用されているというところからもわかるように、一般に株価は景気に先行して動くと言われます。つまり、景気がこれから良くなりそうだというとき(まだ良くなってないとき)に株価は上がり、景気はこれから悪くなりそうだ(まだ悪くなっていない)ときに、株価は下がるということです。

これはなぜでしょうか? すでに説明したように、株価は、期待を織り込み、先食いしながら動いていきます。そのため、景気が良くなりそうだという兆しが見え始めたり、不景気が長く続いたからそろそろ好景気に転換するだろうという時期になると、その期待から動き始める、というのが、理由の一つです。

株価が景気に先行するもう一つの理由は、金利との関係です。不景気の時期には金融政策は緩和されます。具体的には、日銀から民間銀行への貸付金利を抑えたりゼロにして、お金を多く移動させ、さらに民間銀行が企業や個人へ低い金利でお金を貸す、ということです。つまり、お金が借りやすくなる=使いやすくなるのです。

不景気の株高=金融相場

ところが、不景気なので、実需(たとえば新規事業への投資や設備投資)には、お金が向かいにくいのです。不景気のときというのは、モノが売れないということですから、そういう産業的な投資をしても失敗する可能性が高いからです。つまり、お金はあるのに、使う先がないという状態になります。これを「カネ余り」と呼んだりします。

すると、余ったお金が少しで有利な運用先を求めて、移動します。それがなにかのきっかけで株式市場に流れ込むと、株価が上昇します。このような、金融的な理由のみによる需要の発生=株価の上昇は、景気が転換する直前(まだ好景気になっていない時)によく見られるもので、これを「金融相場」と呼びます。

つまり、期待先行とカネ余り、この2つの理由により、株価は景気に先行するのです。

<景気と金利と株価の関係>
景気 金利 株価
景気縮小 下落 下がり始める
景気低迷 低い 低い
景気上昇開始 低い 上がり始める(金融相場)
景気の山 上昇 高い(業績相場)

金融面が注目される上昇相場から企業業績に注目が集まる相場へ

その後の株価の動きは、期待が本当に実現するかを確認するものとなります。つまり、本当に景気がよくなって企業業績がよくなれば、株価はさらに上昇します。一方、実際の企業業績が期待したほど良くならなければ、金融相場が終わり、株価は下落に向かうでしょう。

このように、実際の企業業績を確認しながら動く相場のことを「業績相場」といいます。

  • 金融相場:不景気の最後に表れる(不景気のカネ余り状態)
  • 業績相場:一般的には金融相場の後に表れる

金融相場から業績相場に移行できるか、この時点のポイントは各社が発表する決算が、事前の予想と比べてどれくらい上昇するのかを確認することです。

なお、景気に関する重要なデータとしては、日本銀行が発表する「日銀短観」もあります。これは、「全国企業短期経済観測調査」という正式名称で、四半期全国の約1万社の企業を調査し、景気の動向を調査するものです。景気動向指数とあわせて、「日銀短観」も必ずチェックするようにしましょう。
日本銀行が発表する日銀短観:http://www.boj.or.jp/statistics/tk/index.htm/

といっても、ボリュームも多い「日銀短観」をそのまま全部読む必要は、まったくありません。発表の翌日の「日経新聞」には、内容の要約と解説記事が必ず掲載されますので、それを読めばOKです。