ページのまとめ
  • 株に出資したお金は返済されないため、株式市場での転売によって回収する
  • 日本には複数の証券取引所があり、それぞれ複数の株式市場を運営している
  • 初心者におすすめなのは、東証の第1部市場

会社は出資金を返済する必要はない

株式会社は原則として、出資したお金を投資家に「返す」必要はありません。なぜなら、「そもそも、株ってなに?」で説明したように、株とは会社の「持ち分」を表すものであり、投資家は株を買うことでその会社の一部を買ったのだからです。

買ったもの(持ち分)を返すから、お金を返してくれ、と言われても、売った方(会社)は困ります。会社からすると、借金と違って、「返さなくていいお金」を集められることが、株を発行する大きなメリットなのです。

つまり投資家は、株を買うことで出資したお金を返してもらうことはできません。

ここが、預金と投資との大きな違いです。しかし、いくら配当金などのメリットがあるといっても、一度出資したお金が二度と返ってこないのでは、株を買う人は少ないでしょう。

では、出資したお金が必要になったらどうする?

そこで、株式会社の次に生まれた仕組みが、株式市場です。つまり、投資家が持っている株を、別の人の転売することで、出資金を回収しよう、という考え方です。いつでも転売ができる場=株式市場ができたことで、出資の敷居がぐんと下がりました。

そして転売する以上は、買った値段よりも高い値段で売って、利益を得たくなります。そのためには、出資したお金で事業を成功・拡大させて会社の価値を引き上げてもらえばいいのです。株は会社の持ち分なのですから、会社の価値が上がれば株の値段も上がるはずです。その後で転売すれば、売買差益も得られます。

このようにして、出資金は、会社に返してもらうのではなく、転売によって回収するというのが、株式のもっとも大切な考え方です。

後から株を欲しくなった人も株式市場で株を買える

ところで、会社はつねに出資者を求めているわけではありません。会社の設立時や、新規の事業を行う際などに、株を発行して出資者を募るのです。そして、その時には株を買えなかったけれども、後から「あの会社に出資したい」と思う人もいます。そういう人にとっても、株式市場の出現はメリットがありました。転売してくれる人がいれば、出資したい会社の株を、いつでも買うことができるからです。

このように、株式市場の出現により、だれでも、いつでも、安心して株を売買することができるようになり、投資家にとっても会社にとっても、大きなメリットが生まれました。株式市場が出現して、自由に株が流通できるようになって、本当に株式会社の仕組みが成り立つようになったとも言えるのです。(なお、歴史的には、債権などを扱う証券取引所のような仕組みは、株式会社より前から存在していました)。

日本の証券取引所と株式市場

現在、日本では基本的に証券取引所が株式市場を運営しています。一つの取引所が複数の性格の異なる株式市場を運営していることがあるので、下の表にまとめました。(一般の個人が参加できる市場のみ。プロ向けの市場は除いています)。

<日本の証券取引所>
証券取引所 株式市場
東京証券取引所(東証) 本則市場(新興企業以外向け) 第1部、第2部
新興企業向け マザーズジャスダック(スタンダード)、ジャスダック(グロース)
名古屋証券取引所(名証) 本則市場(新興企業以外向け) 市場第一部、市場第二部
新興企業向け セントレックス
福岡証券取引所(福証) 本則市場(新興企業以外向け) 本則市場(名称無し)
新興企業向け Q‐Board
札幌証券取引所(札証) 本則市場(新興企業以外向け) 本則市場(名称無し)
新興企業向け アンビシャス

各株式市場で異なる上場基準と銘柄の性格

会社にとっては、株式市場で、株を不特定多数の投資家に売買してもらえることは、大きなメリットがあります。しかし、すぐに倒産しそうな会社の株や、反社会的な活動を行っているような会社の株までが、株式市場で取引されていては、投資家に不利益をもたらし、混乱をまねきます。

そこで、現在の株式市場で売買できるのは、証券取引所が定めた基準(売上高や利益、資本金の額など)をクリアして、登録された会社(これを銘柄<めいがら>といいます)だけに限られています。

この、株式市場に登録されることを「上場<じょうじょう>」と呼びます。上場されると、不特定多数の投資家に株を買ってもらえるので、上場のことを「株式公開」、上場している会社(上場企業)のことを「公開企業」と呼ぶこともあります。なお、東証と名証など、複数の取引所の市場に同時に上場することも可能です。

上の表で、それぞれの証券取引所が複数の株式市場をもち、特に東京証券取引所には、5つもの市場があることがわかります。これは、市場によって上場基準を変えることで、多くの企業が上場しやすくなり、また投資家にとっても市場の種類を見れば、銘柄の性格がある程度わかるというメリットがあるためです。

<東京証券取引所の内訳>
東京証券取引所(東証) 上場難易度 人気度 特長
第1部 日本を代表する市場。初心者が狙うのはまずここ!
第2部 規模は小さいが歴史の長い中堅企業が多い。ただし、流動性が低い企業が多いことに注意

ジャスダック

(スタンダード)
新興・ベンチャー企業を狙うなら、ここ。流動性に注意
マザーズ 第1部、第2部を狙う成長予備軍が集まる市場

ジャスダック

(グロース)
グロースの名の通り、成長性を重視する企業が集まる

東証の場合、もっとも基準が厳しいのが、第1部市場です。基準が緩いのが、マザーズ市場とジャスダック(グロース)市場です。相対的に見て、基準が緩い新興企業向け市場の銘柄は、株価の値動きが激しく、また、上場廃止(登録を取り消されること)や、倒産などのリスクも高いものとなっています。

<2010年~2013年の各取引所別 上場廃止件数と、その内訳>
市場
(上場企業数)
上場廃止 上場廃止理由の内訳 代表例
倒産
(会社更生、
破産など)
上場基準
抵触など
会社合併、
自社による
株式取得など
第1部
(1823)
132 8 1 123 武富士
山水電気
鈴丹
第2部
(551)
60 60 2 55 大和システム
ジャスダック
(スタンダード)
(881)
12 2 7 3 インデックス
マザーズ
(190)
30 2 7 21 TCBホールディングス
ジャスダック
(グロース)
(48)
1 0 0 1 スタイライフ

投資家側から見ると、その銘柄が属する市場を見ることで、ある程度その銘柄の性格がわかるということになります。初めての株を買う場合は、もっとも基準が厳しい東証1部の中から選ぶことをお勧めします。

株に慣れたら、私設取引システム(PTS)も使う手も

証券取引所が運営する株式市場以外にも、証券会社などが運営する「私設取引システム」(PTS:Proprietary Trading System)と呼ばれる市場もあります。

PTSは以下の特徴を持ちます。

<PTSのメリット>
  • 取引所が閉鎖している夜間にも取引が可能
<PTSのデメリット>
  • 値段の決定システムが、証券取引所と異なる(顧客同士の相対注文)。
  • 取引所に比べて、売買数量(利用者)は、けた違いに少ない。

PTSは、夜間に取引できるメリットもありますが、一方では価格の決定が、取引所と異なる仕組みであったり、売買数が少なかったりという、難しさもあります。

取引所が閉まった後に、大きな事件が起きたとき、たとえば、ある企業で大きな不祥事が発覚した場合等、通常は翌朝になるまで株を売買する対応ができません。ところがPTSを使えば、取引所が開く前にその株を売買しておくことが可能になり、他の投資家よりも、一歩先をいくことができるのです。

なお、PTS取引は、上記のようなメリットがあるため、一時は多くのネット証券が取り扱っていましたが、初心者が参加しにくいなどの理由があり利用者が増えなかったため、現在取り扱いをしているのは、SBI証券のみです。

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