ページのまとめ
  • 銘柄を比較したり、株価の動きを比較するときに使う数字が投資指標
  • 投資指標を見る時に注すべきポイントは、さや寄せ、割高・割安、会社全体と一株当たりの3つ
  • 同じ価値のものは同じ価格に近づくというのがファンダメンタルズ分析の基本

投資指標を見る際に大切な3つのポイント

これから、さまざまな投資指標を見ていきます。投資指標とは、銘柄を評価したり、株価を比較したりする際に参考とする、さまざまな数字のことです。投資指標を見る際に、その前提となる大切な考え方が3つあります。それは以下の3点です。

<投資指標を見る際のポイント>
  • (1)さや寄せ
  • (2)「割安」と「割高」
  • (3)「会社全体」と「一株当たり」

(1)さや寄せ:同じ価値のものはだいたい同じ値段になる

1つは、「さや寄せ」という考え方です。これは簡単にいうと「同じ価値のものは同じ値段になる」。ということです。たとえばいま、2軒の八百屋が並んでいるとします。

このとき、同じ産地で同じような大きさの大根を、1軒の店は100円で売り、もう1軒の店は300円で売っているということは、一時的にはあるかもしれませんが、長い期間ずっとその値段のままということは、通常ありません。

なぜなら、100円で売っている八百屋の店主は、「隣の店が300円で売っているなら、もうちょっと高くしてもいいかも」と思って150円に値上げすることを考えるからです。

値段を高くすれば儲けが多くなるのですから、売れるのであれば当然値段は高くしたいでしょう。一方、300円で売っている店の主人は、300円では高すぎたかと思い、200円に値下げすることを考えます。

このようにして、需要と供給の法則が働くところでは、同じような価値のものは、時間が経てた、だいたい同じような値段になるというのが原則です。

(2)割安、割高:割安なものは値段が上がり、割高なものは値段が下がる

もし、何らかの事情で一時的に、100円の大根と300円の大根が同時に売っているとしたら、このとき100円の大根は相対的に「割安」(価値が同じなのに価格が安いこと)であり、300円の大根は「割高」(価値が同じなのに価格が高いこと)であると考えられます。そして、時間が経つにつれて、割安なモノは値段が上がり、割高なモノは値段が下がり、同じ値段に寄っていきます。このような動きが「さや寄せ」です。

株の銘柄を選ぶ際にもこの考え方があてはまります。同じような価値の会社は、同じような株価になってきます。株式市場に「いい会社」はたくさんありますが、株価がこれから上がるのは、いい会社なのに「その割には株価が安い」と思われる割安な銘柄です。いくらいい会社でも、割高な株価で買ってしまったら、儲けることは難しいでしょう。

つまり、株式投資に際しては、会社の価値を見抜くことは大切ですが、それだけでは足りなくて、会社の価値と株価とのバランスはどうなっているのか=「割安」なのか「割高」なのかを見なければならないのです。

(3)「会社全体」の価値と「一株当たりの価値」を区別する

ただしここで注意しなければならないのは、株価は「1株」の値段だということです。会社はたくさんの株を発行していますから、会社全体の価値と、株価を直接比較することはできません。会社全体の価値を発行済みの株式数で割って、「一株当たり」の価値に落とし込んだものを、株価と比較しなければならないのです。逆に、会社全体の価値は、「発行済み株式数×株価=時価総額」で表されます。

これらの点については、すでに「株価は、その会社の値段なの?」の項目で、セブン&アイとローソンを例に説明しました。

しかし、ファンダメンタルズ分析をするにあたってのもっとも基本となる大切な考え方ですので、ここで復習を兼ねてもう一度説明しておきます。

  • 株価=一株あたりの時価=一株あたりについて株式市場が決めた価値
  • 時価総額=会社全体の時価=会社全体について株式市場が決めた価値

発行済み株式数の確認を忘れずに

会社全体の価値と一株当たりの価値の違いを、セブン&アイHDと、ローソンを例に確認しましょう。
いま、セブン&アイHDの株価が約4200円、同じくローソンを経営しているローソンの株価が7300円です。

株価だけを見れば、ローソンの方がセブン&アイHDより高くなっています。しかし、セブン&アイHDとローソンの発行済み株式指数は、以下の通りです。

  • セブン&アイ:約8.9億株
  • ローソン:約1.0億株

ここから、それぞれの時価総額=会社全体の価格は、以下のようになります。

  • セブン&アイ:4200円×約8.9億株=約3兆7380億円
  • ローソン:7300円×約1.0億株=約7300億円

このように、セブンの時価総額=会社の値段は、ローソンの約5倍です。これが、株式市場が2社に与えた評価ということになります。

「一株当たり」と「会社全体」をしっかり区別すること、ここではまずこの点を確認してください。

最新の発行済み株式数は、決算短信でわかる

なお、最新の発行済み株式数は、決算短信でわかりますし、また、『会社四季報』、ヤフーファイナンスなどでも確認できます。期中に株数が変化した場合は「期中平均株式数」が用いられます。

期中に株数が変化した場合用いられる期中平均株式数