- 基礎編
- さらにくわしく企業を知る
2014年9月4日
決算に関するさまざまな情報の種類
- ページのまとめ
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- 決算に関する情報は、次期ごとにさまざまなものが出される
- もっとも基本となる資料は、有価証券報告書
- 株式投資で一番使う資料は、決算速報
企業が発表する決算情報の種類
企業が発表する決算に関する資料は、いくつかの種類があります。最初にまとめておくと、以下のようになります。
書類名称 | 配信頻度 | 内容・読む上でのポイント |
---|---|---|
有価証券報告書 | 1年に1度 | 1年間の会社の活動のすべてをまとめた資料。ボリュームが多いので一から読むというより、なにか不明点があったときに調べるような感じで使う。 |
四半期報告書 | 3ヶ月に1度 | 有価証券報告書の四半期バージョン。最新の企業の動向を知るには、こちらを確認する。 |
決算短信 | 有価証券報告書・四半期報告書の公表の数日前(3ヶ月に1度) | 証券取引所が決めたフォーマットに従って書かれている、投資家向けの資料。有価証券報告書や四半期報告書よりも早く発表される。株式投資をする場合、まずこれを読む。とくに最初の2ページの表の数字は必ずチェック。 |
決算説明資料 | 有価証券報告書・四半期報告書の公表時 | 各企業が自由な形式で作成する投資家向け資料。グラフなどを多用して、決算短信よりもわかりやすく表現されていることが多いので、決算短信と合わせて読むとよい。 |
決算書を含めた上場企業の基本情報は「有価証券報告書」にまとめられている
上場企業は、投資家保護などのために、企業に関していつ、どのような情報を開示(公開)しなければならないかが定められています。
上場企業が開示すべき情報で、もっとも基本的、網羅的なものが、年に1回作成される「有価証券報告書」です。
有価証券報告書は、その会社について、開示すべきあらゆる情報がまとめられており、ページ数は200ページ以上にもなる、長大な書類です。
「有価証券報告書」は本決算後に作成され、その一部として、財務諸表=決算書が含まれています。企業の業績、事業内容などについて調べたい場合、もっとも元となる資料が「有価証券報告書」です。
- 有価証券報告書目次例 スズキ 平成25年3月期 スズキIR情報
3か月ごとに出される四半期報告書
本決算の後に「有価証券報告書」が作成されるのと同様に、四半期決算ごとに「四半期報告書」が作成、公表されます。ある年度の「有価証券報告書」が作成された後に、次の年度の「有価証券報告書」が作成されるまでの間の最新情報は、四半期報告書を確認すればいいということになります。
四半期報告書は、内容的には有価証券報告書のダイジェストのようなものになっています。
- 四半期報告書目次例 スズキ 平成25年3月期 スズキIR情報
有価証券報告書や四半期報告書は、決算から3か月以内に作成されます。3月末決算の企業であれば、遅くとも6月末までには有価証券報告書が公表されます。実際には、企業によって多少差がありますが、以下のようなタイミングで公開されることが多いです。
- <有価証券報告書等の公開タイミング>
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- 事業年度=4月1日から翌年3月31日:「有価証券報告書」は6月後半に公表
- 4月~6月:第1四半期(1Q)。四半期報告書は7月末から8月上旬に公表
- 7月~9月:第2四半期(2Q)。四半期報告書は10月末から11月上旬に公表
- 7月~9月:第3四半期(3Q)。四半期報告書は1月末から2月上旬に公表
- 7月~9月:第4四半期(4Q)。四半期報告書は4月末から5月上旬に公表
報告書の前の速報である「決算短信」が、株式投資ではもっとも重要な資料となる
上場企業は、「有価証券報告書」や「四半期報告書」を公表する前に、「決算短信」という速報を出します。これは、証券取引所の「適時開示ルール」というルール(投資家に公表すべき情報は、すぐに公表すべきというルール)にのっとって、決算発表時に作成・提出する、共通形式の決算速報です。
有価証券報告書は会社法などの法律に基づいて作成、公表されるものですが、決算短信はそのような法律に基づく義務ではなく、証券取引所が義務付けているものです。
株式投資をする上で、なにはなくとも押さえておきたい基本資料が、この「決算短信」です。有価証券報告書が200ページ以上のボリュームなのに対して、決算短信は「短信」という名前の通り、10~50ページ程度のボリュームなので、比較的読みやすくなっています。
とくに重要な部分は、最初の2ページにまとまっていますので、この2ページだけでも目を通しましょう。決算短信が発表されると、日経新聞にはそのダイジェストが掲載されます。いわばダイジェストのダイジェストで、もっとも重要なポイントだけが掲載されているといえます。もし決算短信そのものを読むことが大変でも、この日経新聞に掲載される数字だけは、絶対にチェックしましょう。
会社から一般投資家に向けた決算説明資料
有価証券報告書や決算短信は、客観性を重視し、フォーマットも定型で、使われる用語も決まっています。そのため、非専門家にとっては少しとっつきにくいものです。もちろん、投資をするならそれにも少しずつ慣れていかなければなりませんが、いきなりそれらを読むのは少し骨が折れます。
一方、企業としては、できるだけ多くの一般投資家に自社の株主になって欲しいと考えています。そのため、多くの企業では、一般投資家向けに、自社の決算の内容や事業内容、見通しなどをわかりやすくまとめた説明資料を作成し、株主総会で配布したり、Webサイトから閲覧できるようにしています。なお、資料の名前は「決算のお知らせ」「アニュアルレポート」「IRレポート」など、会社によってさまざまです。
こちらは、その企業が投資家に対してアピールしたいポイントを前面に出しています。表現も、決算短信が、定型の文章と数字が中心で、ややとっつきにくに印象があるのに対して、この説明資料はグラフなどビジュアルを多用して見やすく工夫されたものが作られています。決算のことを知りたいと思ったら、まずはこれらの会社資料を読んでみるといいでしょう。
ただし、こちらは、あくまで企業が伝えたいことを前面に出しているので、極端にいえば「広告」に近いものです。ウソが書いていることはありませんが、会社にとって都合のよいところが強調されるということはあるでしょう。あくまで基本となる客観的な資料は、法定の「決算短信」だと考え、説明資料は補足的なものだと考えておきましょう。
決算関連の資料はどこで見ることができるか
このような資料は、上場企業のWebサイトの「IR情報」「投資家情報」といったコーナーに、過去数年分が必ず掲載されています。
また、有価証券報告書、四半期報告書など、上場企業が公表するすべての法定公表資料は、金融庁が作成・管理している「EDINET」(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)というWebサイトで閲覧できます。
http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
一方、証券取引所が義務付けている決算短信は、東京証券取引所の「適時開示情報閲覧サービス」の中に、その他の適時開示情報とともに、まとめられています。
http://www.tse.or.jp/listing/disclosure/