ページのまとめ
  • 資産全体に対する最大損失割合を設定しておく
  • 資産が値下がりし、最大損失割合に達したら、リスク資産はすべて売る
  • 資産総額のチェックは、週に1回程度行う

これ以上資金を減らしたら危ないという「最大損失割合」を5%くらいに設定する

投資資金管理には、ポートフォリオ管理とリスク管理の2種類があります。ここでは、後者の具体的なやり方について説明します。

まず、投資金額(株を買うために用意した資金の総額)に対する、「最大損失割合」をあらかじめ決めておきます。そして、その設定した水準になったら、いったん「リスク資産への投資を中止」するのです。つまり、株を持っているなら、全部売ってしまいます。

最大損失割合は、投資金額、また、あなたがどれくらいリスクを許容できるのかによっても変わってきます。比較的少額な投資の場合、一般的な目安としては、5%くらいが適当だと思います。

リスクを大きく取ることを好む方など、人によっては、10%程度までの数字で設定してもいいかもしれません。しかし、どんなに大きくても、10%を超える水準にすることは、おすすめしません。

このようなリスク管理は、機関投資家などのいわゆるプロの投資家なら、だれでも絶対にやっていることで、投資においてもっとも重要なポイントです。

最大損失割合は、投資金全体に対するもの

具体例で見てみましょう。

たとえば、いま全体の投資金額が100万円だとします。そして、30万円で株を買い、70万円を個人向け国債で持っているとします。

  • 例1:投資金額100万円=株30万円+個人向け国債70万円

このとき、総投資額に対する最大損失割合を5%に設定します。

  • 総投資額100万円×5%=最大損失額5万円

つまり、全体の投資額100万円に対して、5万円の損失が発生したら、リスク資産(この場合は株)への投資は中止します。個人向け国債は元本保証で、リスク資産ではないので、そのまま保有していてかまいません。すると次のようなポートフォリオになります。

  • 現金25万円+個人向け国債70万円

次に、下のようなポートフォリオだったとします。

  • 例2:投資金額100万円=株20万円+FX20万円+個人向け国債60万円

このとき、FXで5万円の損失がでたら、最大損失割合になります。そこで、リスク資産である「株とFX」をすべて売ります。

  • 現金35万円+個人向け国債60万円

このように、一定の損失が発生したときは、一度リスク資産をすべて現金にしておくことが基本です。
損失が発生しているということは、どこかで投資の判断に誤りがあったということです。そこで、いったんリスク資産のポジションをゼロにして、冷静になって考え直して、投資をし直します。

しかし、たとえば、「持っている株のうち、○○株は、株主優待を目的に長期保有するつもりなので、もともと売るつもりはない」というような場合もあるでしょう。そのようなものは、除外してもかまいません。

注意しなければならないのは、個々のポジションに対する損失ではなく、「投資資金全体」に対する損失割合だということです。いま、20万円の株を持っていますが、その5%である1万円の損失ではなく、投資資金50万円に対する5%だから、2万5000円になるのです。

本格的な売買へのチャレンジ(5)危機管理には逆指値注文が有効」で説明した、個別銘柄の損切り水準と、ここで説明している投資資金総額に対する最大損失割合の設定は、別個のものだということです。どちらも、別々に発生する場合もありますし、両方が同時に発生する場合もあります。

含み損益が発生すると、投資資金総額も変わる

この例1で、30万円で買った株が、40万円に値上がりしていたとします。すると、投資資金の総額は次のようになります。

  • 例3:投資金額110万円=株40万円+個人向け国債70万円

ここで、投資金額が110万円に増えています。最大損失割合は同じ5%で変更はしません。したがって、最大損失額は5万5000円になります。

このように、投資資金の増減によって、最大損失額は変わってきますが、ポジションがある場合は、これを毎日チェックするのは大変なので、週に1回程度、週末にチェックして把握しておけばいいでしょう。

「ポジション」とは保有している株などを指す言葉

ちなみに、保有している株などのことを「ポジション」といいます。また、持っているポジションを売って現金に換えることを「ポジションを解消する」、あるいは「手じまいする」などと言います。持ち株を売るというより、ポジションを解消する、手じまいするという言い方の方が一般的なので、覚えておいてください。

なぜこのような言い方をするかというと、信用取引や指数先物取引などでは、「売りからスタートする」こともできるからです。「売りのポジション」は、買いによって終了します。そのため、現金化することは、ポジションを「売る」という言い方ではなく、解消、手じまい、あるいはゼロにする、などというのです。